外科治療の向上と優秀な 外科医 を育成する
一般社団法人京都大学外科交流センター
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若い外科医を育てる施設を目指して~市立大津市民病院外科の取り組み~

  光吉明

1986年 滋賀医科大学卒業
京都大学第2外科
1987年 大和高田市立病院
1991年 京都大学医学部大学院
1995年 三菱京都病院
2011年 大津赤十字病院
2012年 大津市民病院
現  在 院長補佐
     外科・消化器外科・乳腺外科部長
    診療局次長、安全管理室副室長
     患者総合支援センター次長
     病床統括調整監

お名前:光吉明先生(1986年卒)

所属施設:市立大津市民病院

地方独立行政法人 市立大津市民病院

平成29年4月に当院は、「大津市民病院」から「地方独立行政法人市 立大津市民病院 」になり、独立採算に変わりました。独立採算であるため、医師一人一人が病院に対して自覚を持って診療することが求められるようになりました。

そのためには、まず「手術ができる外科医」であることは、最も重要なことです。
もちろん「理論的」なことも必要ですが、そればかりで、実際の手術ができないようでは外科医としていけませんからね。
この点で、市立大津市民病院は「手術ができる外科医」を育てています。
これは自信をもってアピールすることができます。

手術が出来る指導医を揃える

若い外科医を育てるためには、そもそも研修医に来て貰う必要がありますが・・・
研修医に来てもらうためには、手術ができる指導的な立場の医師を揃えることが重要だと考えています。

当院では「手術ができる中堅以上のスタッフ(日本内視鏡外科学会技術認定)」が、2名在籍しています。
さらに胃癌に対しては滋賀県で唯一、H28年は14例、H29年には13例のロボット手術も行っています。

このことからも、当院の高い技術を理解してもらえると思います。

市立大津市民病院

参照: 市立大津市民病院 HP

内視鏡手術は、安全性の担保が必要ですが、 市立大津市民病院 のような中規模病院で外科だけで2名の技術認定医が在籍していることは貴重だと思いますし、今後はスタッフ全員に技術認定医取得を義務付けます。

さらに当院では、ロボットの手術も出来る医師がいますので「手術ができる中堅以上のスタッフ」がいれば、そういう人たちに習いたいという若手医師が、必然的に集まってくると考えています。

高度鏡視下手術トレーニングセンターの開設

光吉明先生手術で、いかに事故を起こさず、尚且進んだ治療ができるかというのは、いつの時代も重要なことです。

低侵襲外科手術として、内視鏡手術が基本ベースになっている今の時代ですが、内視鏡手術には、高い技術が求められています。
そのためトレーニングも受けないまま内視鏡手術を行うことは非常に危ないことです。

だからといって「手術ができる中堅医師」だけで対応していても意味がありません。
若手医師も、十分「腹腔鏡手術技術を身につける」事ができるように、市中病院としては珍しい「高度鏡視下手術トレーニングセンター」を開設いたしました。※高度鏡視下手術トレーニングセンター様子はこちら

当院のトレーニングセンターには、評価の高いドライボックス3台揃えた専用のトレーニングルームをはじめ、色々なマシーンを備え、技術認定医が技術指導を行います。

そして、トレーニングセンターで「テストをクリアした外科医のみが執刀できる」という制度を設けて、手術技術を明確に出来るようにしています。
例えば「縫合を何秒以下で終了する」とか、テストを実施しして、それに通った人間だけが(研修医も含めて)執刀医として執刀できるというものですね。

現在、外科と泌尿器科と産婦人科が、このプログラムにそってトレーニング中です。
このトレーニングのテストをパスすれば、内視鏡認定医も取りやすくなると思いますよ、必然的に技術が向上しているわけですからね。

それに、このテストは「医師を守る」ことにも繋がっています。どういうことかというと、所定のトレーニングを受けて、テストをパスし、病院が認めた人間であるという「後ろ盾」が出来るわけです。

論文発表は臨床医の義務

そして、経験した症例をしっかりと自分のものにするためにも、当院では論文作成を積極的にすすめていますし、スタッフには年一編の論文作成をデューティにしています。
といってもなかなか書いてくれませんが(笑)
実は、私自身も先日も英語論文が一つ通ったところです。なんとか年に一つは書こうと思っています。

医学論文は症例報告が基本で最も重要だと思っています。
自分の経験した症例を何らかの記録として世に発表して「共有」しなければ、医学は発展しませんよね。
それと、自分が診療させていただいた患者さんへの恩返しだとも思っています。
そのためにも、臨床医として「論文作成」や「学会発表」は、義務だと思っていますよ。

よく「光吉先生は、いろいろな資格を持っておられますね」と言われます。
確かに大学勤務医ではなく一般病院勤務医としては比較的多いかもしれません。

しかしこれは多くの手術症例を重ね、それを基に「論文」を書くことで結果として自然に得られたものと言えます。
学会発表は激務のあいだの息抜き旅行のようなものですのでどんどん行ってほしい。
しかし学会発表はするけれど論文作成をしない外科医は、将来必ずしっぺ返しを食らうと断言できます(笑)。

それに資格を持つことは、自分のため以上に病院にとっても重要なことですよ。
各種学会の認定施設が維持できませんからね。
だから、大学を卒業した時から「論文を書きなさい」と厳しく指導してくださった先生方(浮草実先生:S46卒、森本泰介先生:S52卒、財間正純先生:S55卒)には、今になって非常に感謝しています。
当時は言われると嫌でしたが、自分がそういう立場となった今、私が最も感謝している先生方です。

それで当院では、手術技術はもちろんですが、論文作成・学会発表ができる外科医の養成を掲げています。
医学は、患者さんにフィードバックさせないといけませんから、どんな患者さんにどんな病気が流行っているのか、問題になっているのか、ということを臨床医が論文や学会で発表するのは重要なことだと思います。

若い時に厳しい環境に身をおくように

市立大津市民病院

どこで専門医外科研修を受けるのが良いかよく聞かれますが・・・
どこでも外科医は不足していますからね、どこへ行っても歓迎されますよ。(笑)

ただ、個人的な見解を述べさせていただくと・・・

  • 症例数が多くて熱意を持った指導医が在籍している
  • 手術を積極的に執刀させる
  • 全体として論文作成が多い
  • 競合する若い外科医が少ない

など、一般的な選択基準になるかもしれませんが、そういった条件を満たしている施設で研修を行うべきだと思っています。

そのためにも、私は短期間でも「地方の中小規模病院」での勤務をオススメしますね。

都市部の病院では、専門性が進んでいる場合がありますが、地方病院は「検査」から対応しないといけない場合がまだまだあります。
また、消化器外科医であっても肺や甲状腺手術もされている病院もあると思います。

でも、そのような病院で身を置けば、沢山の引き出しを持つことが出来るようになりますし、将来的に専門性を極める上でも必ず役立ちます。

ある程度経験を積んで、指導医的な立場になると、いろいろな責任を負うことになるため、新しい事に挑戦することが難しくなります。
若いうちに「地方の中小規模病院」に行って、いろいろな経験を積むことは絶対に必要ですね。

そして、すでに研修を始めておられる先生は、その病院で置かれている現状に満足する、あるいは不平を言うのではなく、与えられた環境の中で最大限の評価を得られるような努力をしてほしいと思います。

もし「この病院は居心地が良いなぁ」と思い始めていたら、そこで成長が止まってしまう可能性があるので、より厳しい環境の施設(指導医)の下に身をおくべきですね。

この点で、当院では「成長したい!」と願っている若い医師に応えることが出来るように・・・・

  • 各種専門医・認定医資格の早期取得と積極的な論文作成
  • 熱意ある後輩指導
  • 仕事の「オン・オフ」はハッキリさせる
  • 人間力(接遇・コミュニケーション能力)の育成

上記を市立大津市民病院外科の評価項目としています。

指導医も施設環境も、若い医師が成長するために必要なものが揃っていますので、市立大津市民病院に是非来ていただきたいですね。

 

 

 

 

 

 

光吉明先生の取得資格(2018年11月時点)

  • 京都大学医学部臨床教授
  • 日本外科学会 認定医・専門医一指導医
  • 日本消化器外科学会認定医・専門医一指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療・認定医
  • 日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医・評議員
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本静脈経腸栄養学会 認定医・評議員
  • 日本静脈経腸栄養学会 NST認定教育施設指導医
  • IC D (インフェクションコントロールドクター)認定
  • 日本外科感染症学会 評議員
  • 日本外科感染症学会 周術期感染管理暫定教育医
  • 日本外科感染症学会 周術期儘染管理認定医