外科治療の向上と優秀な 外科医 を育成する
一般社団法人京都大学外科交流センター
11:00~18:00(月〜金)

京都大学小児外科セミナー2018年冬

開催日時
開催場所
京都大学医学部附属病院第2臨床研究棟8階セミナー室
参加人
18名
当日プログラム
PDFプログラム
詳細

症例報告

  • • 先天性横隔膜ヘルニア
  • 16週で胎児診断 肝脱出はなく臼井分類でGroupBの重症のため、新生児科 心臓血管外科 PICU担当医などの多科多職種で会議を開きECMOを装着することを前提に、帝王切開をPICUの手術室で行った。
  • ECMOの導入は必要無く生後3日目に横隔膜ヘルニア修復術を施行。
  • 早期に再発を来たし 最近イレウスを発症したため再手術となった。
  • • 気管無形成
  • 胎児診断でFallot四徴症疑い 1000gで出生。挿管後SpO2の低下があり、食道気管裂疑いで転院。
    DORV、回腸閉鎖症を合併。転院後の診断は 気管無形成 C型食道閉鎖(下部食道は食道と交通する気管と交通)で非常に稀な疾患であった。
  • • 盲腸捻転
  • 1歳時にLPECの既往があるが生来健康な13歳男児。腹痛があり撮影した造影CTで遠位小腸に捻転像があり盲腸捻転が疑われた。術前診断通り盲腸捻転があり異所性胃粘膜を伴うメッケル憩室を認めた。
    メッケル憩室切除と非吸収糸で上行結腸固定を行った。メッケル憩室には炎症所見など無かったので捻転の原因としては考えにくかった。
  • 文献考察では盲腸の固定不良に何らかの2次的要因が加わって発症するようで通常は脳性麻痺などの合併症例が多い。固定後の再発率は0〜30%。
  • • アラジール症候群
  • 生後14日に黄疸 白色便で紹介。父はアラジール症候群で肝移植後。
  • 顔貌 肺動脈狭窄 蝶形椎体あり。29日 開腹肝生検 術中胆道造影を行った。
  • 胆嚢胆汁は白色で造影上3管合流部肝側は造影されなかった。胆嚢液中の膵酵素は上昇していた。肝生検上Paucity of bile ductは認めなかった。文献的考察では葛西手術を施行したアラジール症候群の肝移植率は高い。
  • フロアからの意見でA医師から肝外胆管閉塞のあるアラジール症候群が存在する。
  • アラジール症候群の肝移植症例に関しては遺伝子カウンセリングが必要との意見があった。またB医師からアラジール症候群に対して葛西手術をして肝移植を回避できた症例はあるかの質問に対してはA医師からないとの回答であった。
  • さらにC医師からアラジール症候群に対して葛西手術を施行してその後の胆汁排泄が改善し成長の改善が得られたことがあったかとの質問に関してA医師から今後検討するとの回答があった。
  • 結論として本症例に対しては葛西手術を行わないで経過観察の方針となった。
  • • 直腸膣前庭部瘻
  • 新生児期に診断し、1歳9ヵ月で瘻孔核出術を施行。瘻孔をcoring outし直腸粘膜を閉鎖した。
  • • 肝芽腫
  • 肝生検は行わずに化学療法施行。AFPは化学療法で著明に減少した。術前の造影CTで右肝静脈は血栓あるいは腫瘍塞栓が疑われた。術中所見 も病理でも血栓や腫瘍塞栓はなかった。術後順調に経過している。
  • • 胆道拡張症
  • 1歳1ヵ月で発症した 胆道拡張症に伴う胆道穿孔。
  • 造影CTで右上腹部から下腹部にかけて腹水と総胆管拡張を認め上記を疑った。
  • エコーガイド下にPTGBD 腹腔ドレナージ施行。胆嚢中Amy高値で胆道拡張症 胆道穿孔の診断となった。MRCPで合流異常を認めた。食事再開後しばらくして腹腔ドレナージから再度胆汁の流出をみとめた。PTGBDからほとんどドレナージされなかった。入院後17日目に 胆道拡張症手術を施行した。
  • ドレナージ後 どの時期に分流手術を行うのがいいか、穿孔部総胆管のドレナージではなく胆嚢外瘻でよかったのかなどを協議した。
  • • 急性巣状細菌性腎炎(AFBN)
  • 9歳男児で、発熱にて発症。精査のために撮影した造影CTで左腎臓の造影不良がありAFBNと診断。AFBNの同側にハッチ憩室を伴うVURを認めている。Deflux注入療法はハッチ憩室があるため困難な可能性が高く手術を行う予定である。
  • • 傍卵管嚢腫
  • 捻転13歳女児で腹痛にて発症。初発時は左下腹部痛であった。
  • 卵巣嚢腫も合併していたが虫垂炎疑いで手術を施行。虫垂は正常で結局左傍卵管嚢腫の捻転であった。術前の造影CTの読影が十分でなかったことが反省された。婦人科的には外妊にならないように卵管は根部での切除が推奨されている。
  • • 副腎皮質腫瘍8歳女児。
  • 7歳時から左副腎腫瘍があり経過観察中にCushing症候群を発症したので腹腔鏡下に切除術を施行。
  • cortical adenomaの病理診断であった。術後ステロイドカバーを施行中である。
  • • 食道閉鎖症C型
  • 食道閉鎖症 VACTREL連合に対して新生児期にTEF切離、胃瘻造設術を施行した。
  • 今回食道閉鎖症根治術前でその術式に関して協議した。食道盲端間のGapが1.5〜2椎体ほどとLong Gapである。フロアからはLivaditis法の経験が提示された。
  • • 十二指腸閉鎖症術後 膵胆管合流異常症
  • 16歳女児 総胆管結石に伴う腹痛で再診となった。
  • 新生児期に十二指腸閉鎖症に対してダイアモンド吻合の既往がある。
  • 輪状膵を合併しており、術前のMRCPで膵胆管合流異常症が疑われた。ERCPを施行したがダイアモンド吻合後でVater乳頭は確認困難で総胆管結石に対する内視鏡的は治療は困難であった。術中胆嚢内胆汁中Amyは高値で膵胆管合流異常症の診断となった。胆道拡張症手術を施行した。