森本先生.jpg理事長就任のご挨拶

謹啓

 平成27年12月5日に開催されました、『第11期第2回京都大学外科交流センター理事会』におきまして、嶌原康行理事長のご勇退を受け、後任の理事長を拝命いたしました。すでに、ホームページでは就任のご挨拶を申し上げましたが、今回平成28年度交流センター機関紙発行にあたり、所信の概要を述べさせて頂き、理事長就任のご挨拶といたします。

 

 この京都大学外科交流センターは、平成16年5月6日の設立記念式典から数えて、はや12年余の年月が立ちました。写真は設立準備委員会の初代メンバーの皆さんです。

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このメンバーで今日の外科交流センターの基礎を構築して参りました。今や780名余りの会員を擁する外科交流センターですが、これも会員の皆様や、賛助施設からの多大なご協力の賜物であると、心より御礼申し上げます。この度の理事長就任にあたりましては、京都大学外科学教室の歴史の重みを改めて受け止め、初代理事長の邊見公雄先生、二代目小泉欣也先生、三代目嶌原康行先生の足跡を汚さぬよう、全力を尽くす覚悟でございます。

さて、平成27年12月5日に開催されました「京都大学外科冬季研究会」では、「交流センター設立10周年記念パネルディスカッション」が行われました。私もパネリストの一人として、「外科交流センターが目指すもの」と題して、所信を発表いたしましたが、本稿にも所信を述べさせて頂きます。

 

減少してゆく外科医

この10数年の間に、医療制度は大きく変化し、患者の命と健康を守る医療最前線である地域医療の実態は大きく様変わりしました。特に、医師全体に占める外科医の割合は徐々に減少しており、厚生労働省が2年に一度実施しております、医師・歯科医師・薬剤師調査(直近は平成26年12月31日現在の状況調査)によりますと、平成8年に8.33%あった外科医の比率は、26年には5.59%まで低下しております。

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さらに病院勤務外科医師数も徐々に減少し、

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地域医療における外科診療機能が維持できるかどうかとの危惧さえ生まれております。

平成18年の調査で一段と減少しているのは、平成16年4月に始まりました、新臨床研修制度が大きく影響しているものと考えられます。それまでの直接入局ではなく、内科、麻酔科、救急、地域医療をはじめとするいくつかの必修診療科と、選択診療科を合計2年間ローテートした後に、自分が希望する診療科の後期研修医として進む制度に変更され、卒業後すぐに外科に入局する医師が激減しました。

 

ただし後ほど述べますが、棒グラフの上に記載してあります数字は、病院勤務外科医師に占める女性外科医師の割合であり、男性勤務外科医師は減少していくものの、女性外科医師の割合は逆に増加し、女性外科医師に頼るところが大きくなりつつあることを示しています(後述)。

 

京都大学外科交流センターの目的

平成21年4月に福岡で開催されました第109回日本外科学会総会では、外科交流センター設立の意義と、この外科医師数減少に関する発表を行い、その後も外科交流センターの活動状況を随時学会発表してきました。これらの活動に携わってきた経過を振り返ってみても、私は当外科交流センターの理念の一つであります、「地域医療に貢献できる優秀な外科医師を育成する」ためにも、

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卒前からの教育体制を考え直す必要性を強く感じておりました。

折しも京都大学医学部では、平成26年度から卒業試験を廃止し、その時間を臨床実習にあてるという世界基準に合わせた医学生教育制度を採用しました。外科交流センターとしても、全面的にこの制度を支援し、各会員施設でしっかりと教育していく義務感を持たねばなりません。実習生を受け入れている会員施設の皆さんには、その使命感をしっかりと念頭に置いて、学生実習にあたって頂きたいと思います。

そして一人でも多くの外科を志す若手医師を増やすために、外科交流センターは各施設の情報や研修会・セミナーの案内など、広報活動も活発に行って参ります。

 

さらに、当初は平成29年度から開始される予定でありました、外科修練プログラム(新専門医制度)の開始が、紆余曲折を経て平成30年度以降に延期されました。

当初は、京都大学が基幹施設となり、多くの会員施設が連携施設として病院群を形成する基本的プログラムや、各地の大規模中核病院自体が基幹施設となり、研修病院群を形成するプログラム等、いくつかのプログラムを実践する計画でした。

そこで、平成27年12月18日に、「外科交流センター関連施設は、この専門医制度遂行計画に積極的に参加・協力し、外科交流センターはその活動情報を全国の若手外科医に発信し、一人でも多くの優秀な外科医がこの外科交流センター内で活躍できるように支援する」旨の声明をホームページに発表いたしました。

しかしその後、各病院団体などから、平成29年度にこのまま制度を開始すると、医師の偏在が起こり、地域医療崩壊につながりかねない、などの危惧が表明され、日本専門医機構は平成29年度4月開始を延期するとの決定を下しました。これを受けて平成28年7月25日に開催された日本外科学会理事会では、外科学会としての正式な開始延期決定がなされ、その後、8月6日の第11期第4回外科交流センター理事会で、「しばらくの間は、各関連施設が従来通り後期研修医の採用募集を行い、研修プログラムも各関連施設の従来のプログラムを使用する」という外科交流センターとしての方針が正式に決定されました。

従いまして、外科交流センターからは、前回平成27年12月段階での情報発信と基本理念には変わりはありませんが、その表現には今回の理事会での最終決定事項が盛り込まれています。

同時に理事会では、「今後、状況によってはプログラム間の移動が認められる可能性があるため、基幹病院になる資格がある大規模中核施設では、プログラム作成や、関連病院グループの構築などを今から進めて行き、専門医機構の方針がはっきりと定まった時には、すぐに行動に移れるように準備を進めて頂きたい」との常任理事(京都大学の3人の教授)からの発言も頂きました。

いずれにせよ最終目標地点は、京都大学外科交流センター内の所属会員数を増加させ、その活動を活発化させるという理念には変わりはありません。

今後はこの専門医制度に関して、随時情報発信をして参りますので、特にホームページには注目して頂きたいと思います。

 

私たちに求められていること

また、先にも触れましたように、医療界を取り巻く状況の中で、昨今の外科医師数の減少が、問題となっております。確かに医師総数は、昭和50年頃の12万人余りから増加の一途をたどり、平成26年には30万人を超えました。さらに、女性医師の割合は昭和50年のわずか6%から平成26年には20%を超えるほどになりました。

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このように、この40年ほどの間に医療の世界にも女性進出が目覚ましくなってきました。一方、外科領域に目を転じますと、日本外科学会の会員数は、平成20年から比較してわずか1700名程度しか増加しておりませんが、女性外科医師の割合は、4.17%から8.18%まで急激に増加しております。

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平成27年12月のパネルディスカッションでも発表しましたが、男性外科医師の減少を、女性外科医師の増加で補完するような形になりつつあり、男性外科医師をいかにして増加させるかという命題と、増加しつつある女性外科医師がいかに働きやすい状況を構築するかの二つの問題を同時に解決していかねばなりません。

この背景には女性の乳腺外科医師の急激な増加などが一因と考えられますが、乳腺外科のみならず、消化管外科や肝胆膵・移植外科の女性外科医師も増加しております。

ここでの大きな課題は、女性医師のワークライフバランスと、結婚、妊娠、出産、育児等の人生の大きなイベントを経て、現場に復帰して頂くことの病院側の理解と支援、同僚の理解、さらに学会や社会全体の理解等があげられます。まさにこれらへの対応が喫緊の課題です。

医療の世界だけでなく、現代日本をこれから支えていくには女性の力が欠かせないというのが私の持論ですが、若い人の人口がどんどん減っていく、いわゆる少子高齢化がこれ以上進めば、外科医療のみならず、地域医療、さらにはあらゆる分野の事業そのものに大きな影響を与えることは間違いありません。

ここで具体的な方策を述べることは控えますが、外科交流センターとしては、この女性外科医師問題のみならず、男性外科医師のワークライフバランス、つまり外科医師全体の処遇改善の活動に力を入れていきたいと考えております。

 

外科交流センターのもう一つの重要なミッションが、外科医としてのキャリア形成支援であります。

専門医取得、あるいは学位取得後の臨床外科医、あるいは研究者としての自分のキャリア形成もさることながら、後輩の指導や、取得した資格を地域医療に生かすことも重要なポイントです。

そのためには、関連施設に求められる人材を送り、過不足のない人員配置を行うことが理想ではありますが、全国的に外科医師が減少していく状況ではなかなか理想通りにはいきません。

せめて都市部で活動して資格を取った後は、地方の機関病院でその資格を十分に発揮して後輩たちの指導に当たり、また逆にそれまで地方でなかなか大きな手術を経験できなかった外科医は、都市部の症例の多い施設で研鑽を積むといった、現在行っております人事交流の大原則を今後も堅持していく必要があると思います。

さらに、現代の若い医師は、組織や団体への帰属意識が薄いように感じられます。自分の出身大学への入局希望も少なくなってきていると聞いております。さらに、外科交流センター内の施設に勤務している医師の中には、正式に会員になっていない医師が少なからず見受けられます。

であればなおさらのこと、外科交流センターが以前から取得を目指しておりました人事の斡旋資格を得ることにより、広く日本全国から若い外科医を集めることで、外科交流センターの規模を大きくしていくことも進めていく必要があると思います。

日本全国からの仲間を集められるような、今まで以上に懐の広い外科交流センターを目指していこうと考えております。

斡旋資格取得には色々と制約があり、又実際に取得して活動を行う際にも様々な困難に遭遇することが予想されますが、何とかこの壁を乗り越えて、外科交流センター全体をより充実させ、多くの会員のキャリア形成のお手伝いができる組織にしていきたいと考えております。

以上、簡単に所信を述べさせて頂きました。京都大学外科交流センターの理念を達成し、会員の皆様の御期待に添えますよう、最善の努力をする所存でございます。なにとぞ前任者同様に御指導御鞭撻を賜りますようお願い申し上げ、就任のご挨拶に代えさせて頂きます。

謹白

 

平成28年09月

 

京都大学外科交流センター理事長

森本泰介

 
 

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